第129回目の冒険!
凶…もとい、今日も今日とて今日を行…いや、逝く?
ダーナ君の、冒険とは言えないようなある日の旅の出来事。
ちなみに…実際にあったらしい…(合掌)。



 重厚な石造りの建物に、地響きのような歓声がこだましている。
 改めて見渡せば、白い砂利の敷き詰められたアリーナはやたらと広く感じられ、 幾重にも囲む観客席は無限にすら思える。
「…うぅ」
 歓声に手を挙げて応える余裕すらなく、彼はうめいた。
「うう、1ターンで全滅するんだろうなぁ…オレ達…」
 彼はソードファイターであった…一応。
 ある程度の腕力も体力も持つものの突出する物はなく、あえて言えば多少素早いかな?という程度で あった。
 その彼が…何故か闘技場にいたのである。
 しかもアリーナ…つまり客席ではなく戦う場に。
 彼の連れは狼とグリフォンであった。
 連れの見た目だけは強そうであるが…何せ連れている本人が弱そうにしか見えないのだから 救いようがない。
 歓声がひときわ大きくなる。
 見上げれば向こうのゲートから対戦相手が入場してきた所だった。
 …思わず自分の運命に十字を切る。
 何も知らない人間が見れば相手チームはたいしたことなさそうに見えるだろう。
 ぱっと見、相手4人はそれぞれ何処かのチンピラ風情にごく普通の少女、更に若いネコ耳司祭に 少女騎士にしか見えない。
 だが。
 その4人を知っている者は…極端に恐れているのである。
 ますますヒートアップする場内に、そのソードファイター…ダーナは火の玉すら漂わせながら こっそりため息をついた。
「Fight!」
 戦闘開始を告げる声に、爆発的な歓声が上がる。
 しぶしぶダーナは剣を抜いた…しかも練習用の。
「だ〜〜!!この際だ、まとめて掛かって来……………ないでください」
 しかし。
 相手は奇襲を幸いとばかり、一斉に襲いかかってくる。
 「我呼ぶは虚ろなる流れ、天をも貫く旋風の柱よ」
 一番恐れている相手…レヴィンが真っ先に攻撃してくる。
 ただし…相手は全体魔法を使おうとしている。その隙に攻撃してしまえば…。
 が。
「トルネード!!」
「ち、ちょっと待て〜〜ッ!!」
 世の中甘くない。
 相手は…連続攻撃とばかり、呪文を唱えるのと同時にあっさり魔法を発動させた。
 勿論ダーナとて、黙ってやられるつもりはない。
 剣に魔力を乗せ、弾き返す。
「当たらないねッ!」
「てやっ!」
「どわっ!?」
 弾き返したのもつかの間、ここぞとばかり、狙い済ましたようにガラス管が飛んで来る。
 ダーナは顔を青ざめさせた。
 このガラス管…正しくは試験管である。
 つまり…中身は『実験台に吹っかけるには、あいふさわしいモノ』である。
 かつて何人もが犠牲になっているこれは…ぱっとみはゲル状のもので、  色といい甘い香りといい、ジャムそのものである。
 が。
 人呼んで邪夢。
 読んで字のごとく、タダで済むような代物ではない。
 ダーナはある意味、さっきの魔法よりも必死に避けた。
 そこへ今度は可愛い司祭様の魔法が…まともに炸裂した。
「ぎええええええっ!」
 よろめきつつなんとか避けようとするが、そうはいかない。
「逃げたって無駄だよッ!」
 狙い済ましたように全体攻撃がばら撒かれる。
 グリフォンと共にまともに食らうとダーナは吹っ飛んだ。
「ううぅ〜…」
 しばらく地面と仲良くしていたが、顔に砂利を貼りつけたままなんとか起き上がる。
 ダーナが起きあがった時には…頭にきたのか、グリフォンが翼で突風を巻き起こしていた。
「よし、えらいぞっ!」
 いつもイジメてくるおっかないチンピラ詩人にクリティカルヒットする。
 思わずダーナは拍手したが、それが悪かったらしい。
「はむげっ!?」
 カウンターとばかり、その詩人…レヴィンの唱えた魔法がグリフォンではなくダーナに直撃する。
 しかも…。
「力尽くで捕獲ーー!」
 邪夢の試験管を大量に隠し持つ娘がにじり寄ってくる。
「捕獲されてたまるかーー!!」
 半ば恐怖に引きつった顔でダーナは必死に逃げた。逃げながら回復魔法をかける。
 しかし相手も回復魔法をかけている。
 こっちはケガだらけ、相手は無傷。
 イチかバチか、ダーナは呪文を唱え始め、目を閉じた。精神を集中する。
 そこへ…。
 狙い済ましたのだろう。
 レヴィンの魔法が直撃する。
「にょええええええええ〜っ…」
 情けない悲鳴を上げながらダーナは吹っ飛んだ。
 顔に砂利を埋め込ませながらもなんとか立ち上がる。
「まとめて逝っちゃいなッ!」
 そこへうら若い乙女の細い足が、凶悪なスピードで滑り込んでくる。
「ゴー!」
 その旋風脚は辛うじて避け、ダーナは狼を突撃させつつ、顔の砂利をなんとか取り除いた。
 つぶつぶが…痛い。
 などと思っているうちに懐にこっそり手が伸ばされている。
「だぁっ!盗むなぁぁぁっ!!!」
「ちぇっ」
 盗むも何も、盗まれなきゃならないような高価なモノは持ってない。
 …それもある意味虚しいが。
 なんとか弾き返したダーナの耳に、澄んだ歌声が流れ込む。
「恐れも悲しみも全ては去り行きて…」
「…あぅ」
 昔聞いた子守唄。
 眠気をなんとか耐えるが…後ろから凄まじい勢いで蹴り上げられる。
「ぎゃっ!」
 ズボンの上から両手でお尻を押さえるというなんとも情けない格好のまま…  あまつさえ目には涙など浮かべたままダーナはやけっぱちになって叫んだ。
「ふれあっ!」
 唯一の十八番。
 狙いも何も関係なし、地面ごと熱風と炎で吹き飛ばす!
「天罰覿面っ!」
 ある意味持っている本人よりも恐ろしい邪夢瓶を叩き落す。
 が、肝心の人間相手にはさほど通用したわけではない。
 それでも相手がひるんでいる隙にダーナは気合でキュアオールをかけると身構えた。
 脇では司祭様と狼が取っ組み合い、グリフォンが敵を引っかいて暴れている。
 人間がどうやってはやしているのかナゾだが、延びてきた触手を振り払うとダーナは1歩下がった。
 1歩下がり…あることに気が付く。
 誰かが…いや、相手の中でこんなタチの悪い魔法を使うのは一人しかいない。
 魔法の詠唱が聞こえてくる。
「呪われし嘆きの涙…」
 ぎぎぎ…と硬直したまま、ダーナは声のするほうを振り向いた。
 一撃で吹っ飛ぶと思っていたダーナが意外と粘ったので痺れを切らしたらしい。
「あ、ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
 ダーナは剣すら放り投げて両手を上げた。
 何やら怪しげな魔力が辺りを包んでいる。これは降参するしかない。
 が…そんなことを許してくれるほど慈悲深い相手ではない。
 死刑宣告のような呪文の詠唱に、明らかに楽しんでいる様子が伺える。
「…その怨み以て減退の幻となれ」
 引きつった笑みを浮かべて後退るダーナに向けて、レヴィンは何が面白いのか、  赤い瞳に意地の悪い笑みを称えている。
 そのまま…。
「ポイズンミスト!」
 酸霧のダメージなら耐え切れるが、状態異常うんぬん以前に毒霧のダメージは耐え切れない。
「相手が悪すぎたな」
 何処か遠くで声がし、視界がぼやけて行く。
 白っぽくなった視界に…見覚えのある草原が幻のように広がって見えた。
 一面を覆い尽くす、小さなフェアリーフレイクの花。
「あ…花畑が見えら…」
 完全に目を回し、ダーナはその場に倒れ込んだ。
「猫の神様、みんなに祝福を…」
「ふふふ…材料確保っと♪」
「………材料って…」
 味方の勝利を感謝して十字を切ったのか、負けた相手に対する慈悲なのか、  それとも敗者を待ちうけるこの後に対しての憐れみか…。
 御丁寧に司祭様が十字を切ってくれる。
 その甲斐があったのかどうかはわからないが…。
「うう、出なおしてきます…」
 数時間後、なんとか死なずに済んだダーナは、半ば外見をミイラ男にしつつも、 すごすごと施療室から闘技場を出ていった。
 その後。
 ダーナはソードマスターまで成長し、頑張ってリベンジ………は、できていない。
PL:…なんと予想を裏切って6ターン粘りました(汗)


モドル